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サイバー戦争の今 ~日本の現状とこれから進むべき道~

日本はデジタル化、ネットワーク化していく世界に向かう準備はできているのだろうか

■日本の現状とこれから進むべき道

 今回発覚した韓国陸軍関係者のメールのやりとりでは、特に気になるポイントがある。3・4ビットコインのような大金を支払ってまで日本企業を攻撃しようとするのは、韓国軍の個人による依頼とは考えにくいということだ。つまり、背後にはより大きな何者かが存在している可能性がある。前出の情報関係者は言う。「韓国の政府や軍、政府に近い企業。そのどれかが背後にいると考えていいでしょう」。

 今、インターネットなどネットワーク化されたデジタル世界、すなわちサイバー空間では、こうした工作が至る所で行われている。ビジネスでは日韓関係悪化に伴う冒頭のような企業を狙ったサイバー攻撃が日常的に行われ、一方で安全保障の面では他国への選挙介入や核施設へのサイバー工作など、各国が水面下で「サイバー戦争」を繰り広げているのである。物理的な軍事衝突が起きるような現場でも、サイバー攻撃なくして戦闘で勝利はないという時代になっている。紛争がない平時でも、世界各国はサイバー攻撃で、有事に向けた準備を活発に行う。国家間の交渉なども優位に運べるよう、サイバー攻撃でスパイ工作をするのも常識だ。

 もはやサイバー空間では、犯罪も、戦争も、スパイ工作も、手段はそう変わらなくなっている。パソコンやネットワークに侵入し、内部のシステムを不正に操作する。銀行口座のパスワードを盗むことから、セレブのプライベート写真を盗んだり、企業のパソコンの情報をほとんど消去することも、工場で作業を不正操作して破壊をもたらすことも、停電も、コンピューターで実行できてしまう。

 世界では、これからますますデジタル化やネットワーク化、AIによるオートメーション(自動)化が進む。先進国である日本も、そんな世界を先導していくことになる。だが、日本はそうした世界に向かう準備はできているのだろうか。

KEYWORDS:

『サイバー戦争の今』
山田 敏弘 (著)

“北朝鮮のミサイルはアメリカがウイルスを使って落としていた”
“マルウェアに感染した高速増殖炉もんじゅが遠隔操作で破壊されたら”
“京アニを襲撃した青葉容疑者もダークウェブ「トーア」を使っていた”
 IoT化が進むなか、すべての電子機器が一斉に乗っ取られるリスクも大いに高まっている。今年10月には、危機感を募らせた日本政府は日本のインフラがサイバー攻撃にあった場合、その報告を義務づける法案を採択(全然報道されていないが)。
 事実、高速増殖炉もんじゅがマルウェアに感染していたこともあり、日本も決して対岸の火事ではない。本書はこれら現在のサイバー戦争のフロントラインを追い、詳しく解説。そのうえで日本はどうするべきなのかを問うものである。

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山田 敏弘

やまだ としひろ

国際ジャーナリスト

国際ジャーナリスト。米マサチューセッツ工科大(MIT)元フェロー。講談社、ロイター通信、ニューズウィーク日本版などに勤務後、MITを経てフリーに。ニューズウイーク日本版や週刊文春、週刊新潮、週刊ポスト、週刊現代などにて記事を執筆するほか『朝まで生テレビ』『教えて! ニュースライブ 正義のミカタ』『アベマTV』などテレビにも定期的に出演。著書に、PCの脆弱性を利用する大国間のサイバー戦争を扱った『ゼロデイ 米中ロサイバー戦争が世界を破壊する』(文芸春秋)、ムンバイテロを引き起こしたパキスタン過激派ラシュカレ・トイバに迫った『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論社)、マリリン・モンローやロバート・ケネディなどを検死しDr.刑事クインシーのモデルになった日本人検視官トーマス野口の半生を綴った『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、CIAのインストラクターだった日本人女性のキヨ・ヤマダに迫った『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)などがある。


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